こんにちは!もしけです。
今回は行動指針の作り方についてです。
- 会社から行動指針の策定する役割を受けた為、作り方の手順を知りたい人事担当者
- 行動指針の重要性を知っておきたい方
- これから人事業務を学んでいきたい方
従業員が100名を超える規模になりそうな時。
もしくは100名を超える規模まで拡大させようと、会社方針で目指している時。
行動指針が明文化されていないようなら、作ったほうが絶対いいです。
会社が大事にしていた事が、薄まったまま拡大すると
- 古くからいるメンバーのモチベーション低下や離職
- クレームの増加や得意先の減少
- いざ会社が舵取りをしたい時のスピード感の減少
などに繋がります。
でも、いきなり行動指針を作ろうと思っていても何から手を付けていいかわからないと思います。
私は、行動指針を明文化するプロジェクトをリーダーとして実施して、明文化後の浸透まで携わった経験があります。
経験で培った事や気づきをシェアできればと思っています。
ただ、今回ボリュームが多くなりまして、この記事を読むのには10分程時間がかかりますので、お時間が余裕がある時に見て頂ければ幸いです。
どうか最後までお付き合いくださいませ。
目次
行動指針とは?その会社の生きてきた行動の証
最初に行動指針とは、何かについて説明致します。
下記の通りです。
会社を長く運営してきた中で、その会社が大事にしていた事、これからも大事にしていきたいという事を、創業者や創業メンバー達が、その会社で勤めるにあたっての行動や考え方を文字に起こして標語にしたもの。
会社を運営する目的として経営理念があります。
経営理念を実現するために、大事にしてきた事が行動指針と考えるとわかりやすいです。
行動指針のメリット:組織がバラバラになるリスクヘッジ
会社が創業期から拡大期に入ると、従業員数が増えて、色々な人が出入りするようになり、色々な価値観が蔓延する事になります。
価値観をバラバラのままにしていると、会社の歴史を知らない人たちが、自分達の価値観や正しいと思った事でしか物事を行おうとしなくなります。
結果その会社組織で、何をやればよいかがわからなくなり、組織の統率が取れなくなるリスクが出てきます。
会社で働いていると、様々なアクシデントが起こります。
クレーム対応や、人間関係のトラブル等です。
このような時に、行動指針が明文化されていると非常に役に立ちます。
「この場面で、うちの会社的に正しい行動は、正しい考え方は何だろう?」
ひとりひとり、一つ一つのシチュエーションや行動は小さな事ではあります。
しかし、これが日常的に積み上がっていくのを想像すると、行動指針があるのとないとでは、組織強化に雲泥の差が出てくるんです。
行動指針を作ってみよう!
という訳で実際に行動指針を作ってみようと思った時、何から手をつければ良いのか。
具体的な手順を説明していきます。
手順は7点に分けられます。
できれば7点の順番はそのままでやりましょう。
順番が入れ替わると正しく浸透していかない可能性があるからです。
① ミッション・ビジョン・バリューの確認

行動指針の実際の作り方に入る前に、一点確認したい事があります。
会社に【ミッション・ビジョン・バリュー】はありますでしょうか?
この三つは経営者・創業者が会社を作って実現したい事を文字に起こしたものです。
行動指針は、従業員一人一人へ大事にしてもらいたいメッセージであるという事は先程説明しました。
ミッション・ビジョン・バリューは、会社経営に関わるすべての人(役員等の経営陣、マネジメント層、株主などの投資家)へのメッセージです。
バリューがあればその内容をベースに考える
もし、ミッション・ビジョン・バリューの3つが既にあるならば、行動指針は【バリュー】に大きく関わってくるものです。
バリューは、その名の通り経営をしている上での【生まれた価値】です。
価値を生み出した一つ一つの行動や思考が大きくリンクしています。
なので、バリューがある場合はそこをベースに考え、行動指針を作るアクションを考えていきます。
創業者へ事前にインタビューしておく
実際に行動指針を作るとなると、会社全体での大きなプロジェクトになります。
自分の上席の役員だけでなく、他部署の役員やマネージメントクラス、いわゆる【お偉いさん】も関わって頂く事になります。
その為、運営する側にしっかりとした軸がないと、会社内で影響力の強い人を味方につける事が出来ません。
影響力の強い人が味方にいないと行動指針ができても、作っただけで終わり。
絵に描いた餅状態になってしまいます。
行動指針の作り方を考える前の注意点!決める時は社員からじゃないって話で紹介した内容は、実際に私が、組織内での影響力を自覚しないで、作ろうとして怒られた失敗談です。
行動指針を作る時の順番は本当に大事なので、間違えないようにしてください。
軸を作る根拠と、会社内で影響力が他のお偉いさんより強い人と言えば、社長(創業者)しかいません。
事前に下記のようなインタビューをしておきましょう。
- 行動指針を作る目的は?または作る上で大事にした方がいいことは?
- うちで働く上で大事にしてほしいことは?
- 仕事をする上で譲れないことは?
- 役員やマネジャー達に人を育てる上で大事にして欲しい事は?
- それぞれの具体的なエピソード
- 今後会社が発展していく上での未来に向けて大事にしたい事は?
- 会社の組織力強化の為に必要な事なので協力してください!のお願い etc…
なかなか自分だけではお近づきになれない会社の場合は、自分の上司と一緒に行きましょう。
② プロジェクトを立ち上げる

インタビューが終わったら実際にプロジェクトを立ち上げます。
基本的に、社長にお願いして、プロジェクト立上げのオッケーをもらっているなら、「行動指針プロジェクトやりますよ~」で済みます。
一応、プロジェクト立ち上げ時の3つの注意点をあげておきます。
注意点1:創業者と当時のメンバーは必ず入れる。
先に協力を仰いでいた社長はもちろんですが、創業期一緒に苦楽を共にしてきたメンバーの参加も絶対に必要です。
創業期、社長が行動指針となりうる行動の指示や共有を一つ一つ受けて、実際に行動してきたのは創業メンバーです。
ある意味社長より、うちの会社で大事にしている&譲れない事を知り尽くしている方々なわけなので、この方達は絶対にいれましょう。
創業期から頑張ってるので、マネージメントのポジションに就いている可能性大です。
味方につければ、その後の行動指針の部下への伝達を凄く助けてくれますよ。
注意点2:各部署のマネジメント層も、もちろんプロジェクトメンバーに入れる
創業メンバーだけで各部署の所属長が揃っていればいいのですが、そうもいかないでしょう。
行動指針を作るだけなら、他の所属長はいらないのですが、行動指針ができた後、自分の部下達に伝えていってもらわないといけません。
行動指針を作り終わった後、伝達をお願いするのと、プロジェクトの段階から一緒に作って伝達するのでは、理解力に差が出ます。
なので、この時点で参加を促しましょう。
注意点3:行動指針を作る目的ををメールだけでなく、口頭で必ず伝える
ビジネスマナー的なものですが、会議のキックオフの告知全体ではメールだけしゃダメです。
先に社長とのインタビューで目的を明確にしましたし、社長も味方についているので、説明自体はやりやすいと思います。
「社長も行動指針ができるの楽しみにしてますよ」
③ プロジェクト会議キックオフ

いよいよ実際のプロジェクト運営に入ります。
ポイントは、普通の会議と変わらない事ですが、目的をしっかりと伝える事です。
会議の冒頭は、行動指針を作る目的の共有とストーリーを語る
「目的は組織力の強化です!」っていっても、かなり漠然としてます。
目的をしっかりと伝えるためには、それを肉付けするストーリーが不可欠です。
ストーリーというと小難しく聞こえますが、要は例え話を時系列でお話すると思ってください。
「創業から○年経って、当社はお客様の御理解と御支援をもらい、創業依頼右肩上がりの成長を遂げていっています。」
「中途入社の方も多数増えてきて、様々な価値観が入り交じり、個々が御自身の持ち味を発揮して、頑張っています。」
「一方、社長が創業以来、大事にしてきた事が、創業期と比べて社長と直接コミュニケーションをとって、行動や考えを共有する機会が少なくなりました。
「その結果、「うちの会社らしさ」を知る機会が減ってきてます。」
「現在は未だ、マネジャーの皆様がしっかりとマネジメントして頂いています。」
「結果大きな混乱がなくここまでこれています。」
「なので、社長と直接伝えていかなくても大丈夫ではあります。」
「ですが、今後更に人が増えたり、売上低迷等、大きな局面を迎えた時、当社として”支え”が不明確な状態です。」
「いざ、その局面を迎えた時、各人がバラバラに精一杯動くのみになります。」
「会社は何の為に組織化するかというと、チームワークで動いた方が、より高い結果成果を上げる事ができるから組織にしてます。」
「チームワークをとるには、共通用語でのコミュニケーションが必須です。」
「その共通用語が行動指針になります。」
「今後、未来永劫発展する為にも、今行動指針を作るために皆で力を合わせて作っていきましょう!」
……ちょっとカッコつけすぎですが。
自分の立場では影響力が弱いな~って感じるなら、上司や役員、場合によっては社長にお願いしましょう。
目的共有のレジュメも作っておくとベターです。
ブレストしよう
さて、冒頭の挨拶が終わったところで、実際に実務に入ります。
先ずはブレスト(ブレインストーミング)です。
- 会社が創業から今まで大事にしてきた事
- 社長に言われて心の支えになった事
- これから大事になるニューワード!
これらをエピソードを交えて皆さん一人一人にお話しいただきます。
といっても、1つの事に対し、1・2分で大丈夫。
欲しいのはキーワードとキーセンテンスです。
昔話が入りますので盛り上がってしまう場合がありますが、全体の時間に制限があると思いますので、要所要所で区切りましょう。
あと、皆さんからあげてもらった、キーワードとキーセンテンスは忘れずに議事録に取っておきましょう。
カテゴライズ
さて、それぞれのキーワードとキーセンテンスが出尽くした所で、今度はカテゴリー分けをします。
カテゴリーは主に3つに分けられます。
行動
「すぐ動く!」「5分前行動」とか具体的な行動がここに入ります。
思考(考え方)
「お客様の為に最前に」とか「チームワーク重視」等、行動を起こす前の普段の姿勢とかがここです。
思想(あり方)
「クリーンファイト」とか、直接仕事に関連する前の普段の人間性でこうあるべきというものが入ります。
なぜカテゴリーは3つなのか?
行動指針を作って、実際にそれを見て行動するのは人間です。
人は行動するには理由があり、その理由を作るのはベースの人間性があります。
3つは人が行動する上で必ずリンクする事です。
うちの会社で正しい行動するのはこうだ!と実際に行動に移しやすくするには3つに分かれている方が、後々伝えやすいし、行動しやすい。
結果、組織に浸透しやすくなります。
なので、この3つでカテゴリ分けをしてみてください。
④ プロジェクトを締めて一旦持ち帰る

3つのカテゴリ分けが終わったら、その場を閉めてください。
理由は、そのまま話し続けると、盛り上がるだけ盛り上がって、行動指針作成が進まなくなるからです。
その場でやろうとすると、
「いや、こっちの方が大事だったよ。
何故なら俺が若い頃、すごいピンチに陥った時、社長が俺にこういうアドバイスをしたんだ、それは……」
とか、皆が昔話に華を咲かせてそれぞれ好き勝手言うので、これ以上はまとまらない可能性が大です。
なので、この場は閉めます。
「皆さん貴重なご意見をくださり、ありがとうございました!
いただいた意見を元に、行動指針を作るノウハウを元に、こちら側で作成させていただきます。
完成次第またお声かけしますので、宜しくお願い致します!」
と閉めましょう。
ちなみに、この会議の後は社長は呼びません。
この後、行動指針の仕上げに入るのですが、社長を入れて、再度創業メンバーを絡めて話すと、
社長の意見に左右されたり、また昔話に華を咲かせてしまったりで、自分の仕事が進まなくなります。
⑤ 行動指針を本格的に作る

会議が閉め終わったら、事務局側でワーディングを始めます。
キーワードとキーセンテンスは出揃っているので、後は、一般的な誰が聞いても一言に仕上げるだけです。
といっても、始めてやると難しいです。
初めてワーディングをされる方は、下記のような参考書を持って、他社の掲げてる行動指針を参考に言葉を作ってみてください。

⑥ 行動指針の数は10個以下が理想

皆から出た意見を元に、【行動】【思考】【思想】の3つのカテゴリーで分けて、キャッチーな言葉でまとめます。
この時にまとめの時、数の確認をしておいてください。
数が11個以上あると多すぎです。
行動指針は、これから会社全体で皆で使用していくものです。
社長も使いますし、マネジメントも使う、もちろん一般社員も使う。
それなのに、これから行動指針を広めていかなければならないのに数が多いとどうなるか?
数が多すぎると伝える方も先ず覚えられない。
覚えられないと伝えられない。
伝えられた方もマネジャー自体が【?状態】で伝えられても、腹落ちせず覚えられない。
ここは、少なくできればできるほど(凝縮できればできるほど)良いです。
3個~5個にまとめることを心掛けましょう。
⑦ 社長⇒役員⇒マネジャー⇒会社全体の順番で告知
行動指針のワーディングが完了したら後は、社長承認を実施します。
ここは、社長だけ個別にお呼びして承認をもらうようにしてください。
他の方がいると社長も意見を求めたくなり、決まらなくなってしまうので、社長承認を得ます。
その場で得られなければ、指摘や意見を元に持ち帰り修正し再度チャレンジ。
この繰り返しです。
無事社長承認を得ましたら、後は、スムーズです。
役員⇒マネジャーまで先日の会議のお礼を含めて、報告ベースで伝えます。
その後、全社メール等で全体に告知し、これで終了となります。
まとめ:行動指針を作る事よりその先が重要
以上が、行動指針を作る時の一連の手順になります。
裁量労働制は導入した後どうするの?(労働時間削減その③) でも書きましたが、
仕組みは作る事自体は手順を踏んで、コミュニケーションをしっかりとれば、そんなに大変ではないです。
難しいのは作った後です。
作ったものを実際に活用していくのは、会社の皆です。
なので、いかに作成の段階で社長や創業メンバーに、この仕組みへの親しみを持ってもらうかが大事です。
行動指針をリリースした後は、皆に活用してもらっているかを定期的にメンテナンスしてくださいね。
行動指針のおすすめ本ご紹介
「ビジョナリーカンパニーへの教科書」です。
古い本ですが、行動指針を作る時に十分過ぎる程です。
私が行動指針を作るプロジェクトを任された時、役員に薦められた本です。
「何でうちの会社が行動指針が必要かわかるか?正にこの本で書いてある事を実践する為だ!読みなさい!」
と、一方的に言われて読んだ本です。
読んでみるとこれは面白い!
実際にこれから行動指針を作成し、浸透させていく流れが物語形式で書かれています。
行動指針というと、専門的で堅苦しそうな内容に聞こえますが、この本は物語として読めます。
頭に入りやすくておススメですよ♪
以上になります!最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!