転職沢山、人事一貫15年以上のもしけです。
今回はみなし残業時間を減らす方法について。
正確には”みなし残業手当で、みなしている時間を減らす方法”についてです。
今回の記事は
人事担当の方に見て頂き、是非実際にやってみて欲しい、効果がある施策です。
よく求人票とかで見た事あると思います。
とかいうやつです。
これ・・・、なくしたくないですか?
もしくは、減らしたいとか思った事ないですか?
そりゃそうです。
お給料を貰う側からして、例えば月間45時間分のみなし残業手当が含まれている給与体系で支給されている人は、月に45時間以上残業をしないと残業代はもらえません。
が、もしこの手当がゼロになったら1分でも残業をすると残業代が手に入ります。
そうです。
甘くはないんです。
いきなりゼロにできるほど、世の中も会社も甘くはないんです。
甘くはないんですが、段階的に減らす事はできると思ってます。
てか、多くの会社には是非、取り組んで欲しいです。
今のみなし残業時間が45時間なら、40時間に!
40時間なら35時間に!
もっと小刻みでも良いです!
何故なら、このみなし残業時間を減らすだけで、
ES(従業員満足度)や採用力が明らかに向上します。
しかも一番怖いと予想される人件費の増加は実は、そこまででもない(増えはしますけどね)です。
むしろ、経営陣やマネジメント層と、従業員との間で、労働時間管理に対する良い刺激になり、組織活性化に繋がります。
私は前職で、労務担当として、裁量労働制の導入や、労働時間管理施策の導入やディレクションに関わってきました。
※詳細は下記記事で紹介しておりますので、興味がある方は是非
裁量労働制導入方法はポイント6点!労働時間削減にも効果ありです!
裁量労働制度は作ったら終わりか?導入後の大事なポイントご紹介!
そんな中、みなし残業時間制度も、50時間のみなし残業時間を45時間に減らす事を行いました。
たった5時間?と思われるかもしれないですね。
ですが、この5時間が皆への影響力がでかいのです。
人件費の増加と差し引きで明らかにプラスの影響力への作用があります。
ここまで読んで頂いて、是非みなし残業時間の変更に挑戦したいと思っていただいた方、やり方の手順をシェアさせていただきます。
最後までお付き合いくださいませ。
目次
変更の手順ステップ0:みなし残業手当の仕組みを知る
実際の手順を説明する前に、みなし残業時間について詳しく知っておきましょう。
会社の給与規程、つまり給与の仕組みを決めるルールは、それぞれ異なりますが、みなし残業手当を導入している会社は、基本的に下記の要素になります。
です。
みなし残業手当の内訳と基本時給の算出方法
例えば、A社という会社に月額30万円の一般職Bさんがいるとします。
A社の給与ルールではこの月額30万円には、みなし残業時間45時間分の残業手当が入っていると定められています。
そしてもう一つルールとして、月の労働時間を給与規程で各社定めております。
この労働時間の事を
といいます。
オーソドックスなものですと1日8時間と月の労働日数20.5日(※)で
”月の所定労働時間=164時間”です。
今回はこちらを使用します。
月の労働時間とみなし残業時間で基本時給を出す
なんでさっきから労働時間を算出しようとしているかというと、
”45時間分のみなし残業代”を出す為です。
〇〇時間分という言い方をするからには、その根拠となる
時給
が必要になります。
その時給の事を基本時給というのですが、それを算出して初めて給与の要素が確定できます。
その時給をいよいよ計算します。
さっき算出した164時間にみなし残業時間を足した合計時間と月額を割ると、その月額の時給になります。
が、忘れてはならないのは、残業時間は1.25割増し分の時給を支払う性質のものです。
なので、時給を出すには、先にみなし残業時間を×1.25して労働時間を計算します。
式にすると
164+56.3
=220.25時間
これが”一ヶ月のみなし残業時間込みの労働時間”となり
この時間に30万円を割ると、基本時給ができます。
これが基本時給です。
基本時給から基本給とみなし残業手当を算出

基本時給が算出できたら後は、それぞれの所定時間をかけて、基本給とみなし残業手当を算出します。
基本時給1,362円×所定労働時間164時間=223,368円(基本給)[A]
基本時給1,362円×割増率1.25×みなし残業45時間=76612.5円(みなし残業手当)[B]
この[A]+[B]の合計が 月額30万円(100円以下は切り上げ)となります。
さて、前フリ長くなりましたが、いよいよ実際にみなし残業手当を変更する手順を説明していきます。
みなし残業手当変更の手順ステップ
ステップ1:内訳のみなし残業手当をシミュレーションする。
先程、みなし残業手当の構成の内訳について解説してきましたが、要するに、基本給もみなし残業手当も時給で構成されているという事です。
そして、手当に含まれるみなし残業時間を減らす為には、時給単価を上げなければなりません。
どういう事なのかを、先程の月額30万円の事例を使って説明します。
繰り返しになりますが、みなし残業時間を45時間含んだ場合の月額30万の内訳は下記のとおりでした。
基本時給1,362円×所定労働時間164時間=223,368円(基本給)[A]
基本時給1,362円×割増率1.25×みなし残業45時間=76612.5円(みなし残業手当)[B]
これをもし、”みなし残業手当を40時間にする”と決めた場合はどうなるでしょうか?
先程説明した一連の計算方法で算出すると下記のようになります。
基本時給1,402円×所定労働時間164時間=229,928円(基本給)[A]
基本時給1,402円×割増率1.25×みなし残業40時間=70,100円(みなし残業手当)[B]
基本時給が1,352円から1,402円に上がりますので、みなし残業手当が減る事がわかります。
手当のみなし残業時間を減らすと=時間単価が上がる
という事は
時間単価が上がる=実質賃金が上昇する
事です。
要するに、従業員が残業した場合は追加で支払う人件費はプラスに発生する事になります。
上記のみなし40時間が例ですと、今までより月の残業時間が5時間短くても残業代が発生するという事ですね。
極端に減らすと賃金の上昇に耐えられない
月のみなし残業時間を5時間減らしただけで、時給が50円上がりましたが、試しに5時間単位での基本時給を出してみました。
みなし時間 | 基本時給(小数点以下四捨五入) |
45時間 | 1,352円 |
40時間 | 1,402円 |
35時間 | 1,444円 |
30時間 | 1,489円 |
25時間 | 1,536円 |
20時間 | 1,587円 |
0時間 | 1,829円 |
ステップ2:今の人件費と比較し、上昇率を把握する
ステップ1の完了し、基本時給の上昇度合いが把握できたら次は、今の人件費と比較をします。
例えば先のBさん(月給30万)のみなし残業手当を、もし含み時間を0時間にし、普段から45時間残業をしているとしたら結果はこうなります。
基本時給:1,829円×1.25=2,286円(残業時給単価)
残業時給単価:2,286円×45時間=102,870円
人件費が10万円プラスになるという事、もしBさんと同様の条件者が10名いたら100万円のプラスになってしまいます。
これでは、よほど儲かっていない限り人件費の上昇に耐えられなくなってしまうでしょう。
自社で適正(許容可能)な上昇率を想定し、含みみなし残業の削減時間を決定する。
33%は抱えきれないが、10%であれば大丈夫。
ここは会社の状況や、利益率にもよるところですが、上記シミュレーションを参考に10%の上昇率であるなら、みなし残業時間を30時間にすることができます。
みなし30時間の基本時給:1,489円×1.25=1,861円
1,861円×15時間(月残業45時間した場合の残業代対象時間)=27,915円
27,915+月額300,000円 /月額300,000円=109.3%(9.3%上昇)
これで、みなし残業時間30時間まで減らして設定できるという事がわかりました。
ステップ3:過去の実績を元にシミュレーションの精度を上げる

ステップ2が完了したので、さぁ実際に改定を進めようと思いたいところですが、ちょっと待ってください!
ここでもう一度、ステップ2で決めた、みなし残業時間数をさらに変数化して考えます。
実態は月45時間通りにはならない事がほとんど
ステップ2のBさんの月45時間残業は、固定数でシミュレーションをしています。
ただ、実際には月45時間をコンスタントに12ヶ月間する人というのは稀です。
忙しくない月は10時間代の残業で済む月もあれば、決算月で60時間を超えて残業をする月もあるかもしれません。
なのでみなし残業手当に該当する対象者全員分の直近一年間の勤怠実績を使って、更にシミュレーションを続けます。
という風に、シミュレーションにロジックを肉付けして、意思決定の為の精度を高めます。
ステップ4:規定(給与規程)の改定をする
ステップ3までを実施し、みなし残業時間を決めたら給与規程を変更します。
今現在の規程はステップ1で実施したみなし残業時間45時間の内訳や算出方法についてが書かれています。
なので、ステップ3で確定した時間の内訳詳細に内容を書き換えます。
ステップ5:取締役会の議案として提出、承認後皆に周知する。
ステップ4の規程の変更が完了したら、取締役会に議題として上げます。
今まで駆使してきた、ステップ1〜3までの内容をエビデンスとして添付し、他の役員に説明をします。
従業員周知&意見書をもらう
取締役会で無事に承認がおりましたら、あとは従業員の皆への周知です。
今回の変更自体は、従業員の皆の条件を不利にしてしまうものではないので一人ひとりの同意はいりません。
しかし、労働者の代表の意見書はいります。
こちらをもらうようにしておきましょう。
ステップ6:労基署に提出し、給与システムに残業計算のロジック登録
- 改定した給与規程
- 規程の新旧対照表
- 承認済みの取締役会議事録のコピー
- 給与規程改定届
- 従業員代表の意見書
この⑤点を揃えて、会社の管轄労働基準監督署に提出し受理されたら終了です。
あとは、給与システムに計算式を登録して完了となります。
まとめ:良い事もある分、残業管理には注意を
もう一度、今回のまとめです。
最後に注意点を一つ挙げておきます。
それは、従業員の労働時間管理はこの規程改定を機に強化するようにしてください。
残業代が今までより少ない労働時間で発生する為、残業が増える可能性は大いに出てきます。
残業代が増えると、人件費も増えますし、会社としての労務リスクも増えます。
かといってこの管理が面倒という理由で、みなし時間を創業期からずっと変えずにいるというのは、もったいないと個人的には思っております。
会社と従業員とで、労務管理について意識して向き合う事。
この体制が意識ができる、構築できる事だけでも、みなし残業時間にメスをいれる事は、大いに意味があると思います。
是非導入をお考えの会社は、前向きにチャレンジしてください。
以上になります
最後までお付き合いお付き合いくださりありがとうございました!