※この記事は、障がい者採用(雇用)の実務にこれから携わる方、既に実務をなさっていて、見直しを考えている方にお役立ちになれる記事です。
こんにちは!!もしけです!
今回は障がい者採用のお話です。
実際に採用が終了して、いざ実務でどうするかのお話をしたいと思います。
私は、障がい者採用の実務については、企画・立案・採用計画・募集・採用・就業マネジメント・退職まで。
すべて主担当として、ドップリお仕事に関わっていますし、結構好きなお仕事です。
今回は、障がい者区分の中でも、私が居酒屋チェーン店で行った、知的障がい者に特化した事例を元にお話ししたいと思います。
※知的障がい者の定義と特徴については、以下の記事をご参考ください。

障がい者採用の背景:定着が課題だった。
以前私が、人事労務をしていた居酒屋チェーンでは、元々お店での調理スタッフなどで、障がい者の方を雇用しておりましたが、お店も忙しく、フォローが中々行き届かなかったのか、短期間で突然出勤してこなくなったり、退職をしてしまったり等を繰り返している状態でした。
この会社は従業員数が全体で500人程いまして、障がい者雇用の法定雇用率が2%でした。
国の法律を守るには、10人の障がい者の方の雇い入れが必要でしたが、現状は2名・・・(´・ω・;)、しかも事務職の身体障がい者の方のみ。
お店で採用した方は、どうしても定着しませんでした。
そこで、人事が主導で管理と、受け入れ体制を構築する事になり、私がその時、メイン担当として、企画からすべてをやる事になりました。
障がい者採用で募集した仕事は、居酒屋店舗の清掃
早速、私が考えたのが、お店での清掃のお仕事をチームでやる事でした。
私のアイデアというより他社事例で、できそうなものがこれだった為、早速試してみることにしたのです( ・ω・)
お店が開店するのが大体16・7時からでして、その開店をする前に、10人弱の清掃チームでお店を回り、清掃をするといったものです。
あくまでお店の負担をかけないようにする事とプラスお店にメリットがあるような清掃をする。
ただ清掃をするだけなら、お店を運営している方が、仕込みや開店準備の時間を使ってお掃除は行っているので、清掃メニューに取り入れたのは主に、普段の清掃時間では【絶対にやらないような箇所】に限定をしました。
例えば、お客様のテーブルの上は普段からやりますが、この清掃チームはテーブルをすべてひっくり返して、テーブルの足などを入念に清掃する。
石段等、普段は磨かないようなものでも、研磨剤を使って磨く。
他にも備品の掃除やメンテナンス等をメニューに取り入れました。
これで大体朝の9時から16時前まで、休憩をこまめに入れて、6時間の清掃をして、みんなで片付けて本社に戻って17時に終了。
1日の流れはこんな感じで、東京都内に100店舗近くあったので、仕事には全く困らなかったんですよ( ・∇・)
稼働開始0~1ヶ月間 目に見える成果に驚き
作った清掃チームは全部で7人。
皆さん知的障がい者の方でして、私は裏でトラブルが起きたときの対応や、お店の店長が来たときの挨拶と許可等、コミュニケーションをする役割でした。
知的障がい者の方は単一化された業務に凄く集中力を発揮し、クオリティーにこだわりもってやる(たまにサボる人もいる)という特性があるのですが、最初の1ヶ月間、一緒に清掃をしてたのですが、
信じられないくらいにキレイにしてくれるんです!!
トイレってこんなにキレイになるの!?
磨き石って元々こんなにキレイなの!?
私もびっくりしましたが、一番ビックリしていたのが店長ですね。
みんな感謝の嵐でしたよ~♪♪
さらにみんな、最初は与えられたポジションを言われた通りにやってくれるんですけど、そのうちに
「こっちの方が汚れがとれる」
「ええ~!もう時間!?もっとキレイにしたかったのに~!」
とか、皆がお仕事にこだわりだしてくれるんですよ。
休憩って言っているのに、「今いいところだからちょっと待って」って言われたりして(もちろん、休憩はとってもらいましたけどね)。
感動もんですよ。
開始1ヶ月を過ぎた辺りからトラブル発生
さて、そんなこんなで1ヶ月を過ぎて、仕事になれてきて、皆がコミュニケーションがスムーズにとれるようになったぐらいから、ちょこちょこ小さなトラブルが発生し始めました。
「お店のビールジョッキがカバンに入ってる!誰だよ!入れたの!?」
最初は、ただのいたずらかと軽く流してました。
しかし・・・
「○○君が貸したお金返してくれない!」
「僕のお財布がない!」
「何でお前そんなに仕事できないんだよ!こっち来んなよ!触られたら仕事が出来ないのがうつる!」
金銭的なトラブルやいじめめいた言葉が発生し始めたので、これはまずい!と思い。
自分なりに叱ったり、諭したり、怒鳴ったりとして、一旦は収まったり、その場でお金を返したりとかは、してくれるのですが、私が見えなかったり、その場を離れている時にまたトラブルが発生する。
困りかねた私は、各メンバーが働く前から就職サポートをしていた障がい者採用支援センターの方々と、
国の障がい者雇用の支援機関である、障害者雇用支援機構のカウンセラーの人とハローワークの雇用指導官を一斉に招いて、このトラブルを共有するため、会議を開きました。
色々教えてもらいましたよ~。
- これだけは、やってはいけない事というのを【働く上でのお約束】として皆に配る。守れないと働けなくなることをしっかりと伝える。
- 特にお金回りは厳重にルール化しておいた方がいい。月にまとまった大金をもらう経験がない人が多いので、金銭感覚が狂って、貸し借りが当たり前になってしまったりする。
- 私一人だけが監視役の状態は危険。リーダーをつけるべき
- 目を離すとサボっちゃう人もいる。小さいホワイトボードとかで誰がどこにいるかを朝の役割を書いておいて置いておくといい
- 障がいの程度は人それぞれ、六時間の間に、休憩一時間だけでは集中力が続かなくなる。お昼一時間を小分けにして小休憩をとるようにした方が良い。
等々、色々貴重なアドバイスを頂きました( ・ω・)
結局今回のトラブルは、各支援センターの方々からきつく叱ってもらい、おまけにリーダーが決まるまでの間、支援センターの方々が交代で見回りに来てくれるようになりました。
一時はどうなるかと思いましたが、どうにか立て直せそうになりましたので、私は皆さんのアドバイスを基に、仕事時間のコントロールの仕組みやルール整備、見回りなどのフロー整備をする事に専念しました。
障がい者雇用促進は、法律になってるくらいなので、国や公共団体の支援機関が沢山あります。
なので、困った時の為に、各支援員の方とコミュニケーションをとっておくことをお薦めします。
3ヶ月間は、障がい者の方とお仕事のメンテナンス期間
この開始1ヶ月っていうのは、障がい者採用だけでなく、どんなケースでも、1つの節目に、なりやすいですよね。
新店舗オープン1ヶ月、入社1ヶ月、男女の交際1ヶ月( ・ω・)
最初の頃って、みんな一生懸命で、皆自分の事や、狭い範囲でしか周りが見えないので、凄く集中してて、いいパフォーマンスを発揮するんですが、慣れてきて1ヶ月位すると、だんだん余裕が出てきて、周りが見えるようになってくる。
そして併せて不満とかも出てくる。
今回の、このトラブルは、まさにそんな感じでした。
なので、仕組みルールの整備が終わった後の次に私がやろうと試みたことは、出てきた不満の洗いだしと、一人ひとりの面談でした。
一人ひとりにケアと仕事の分担をハンドメイドに
改めて面談という場を設けてみると、まあ、皆さん不満に溢れ帰ってるんですよね( ;´・ω・`)
人間関係、お金、お給料、仕事で使う備品、仕事内容等々、ホント健常者となにも変わらないんですよ。
違う事と言えば、とにかくピュアだという事。
こちら側(この場合は受け入れている、会社の人事側という意味です。)がどれだけ一人ひとりに向き合って、その人毎に、お仕事の配分などをちゃんと決めてあげられるかが、大事になってきます。
でないと、結構すぐに辞めてしまう。
しかも一人が辞めた後、退職連鎖が結構なハイスピードで起こります。
実は、7人で構成したこのチームは、仲良しだった二人が、すぐに辞めてしまったんです。
そして追加で二人の採用をしたという状況です。注意しましょう。
面談で、全体と上手くコミュニケーションをとれるタイプの人は、仕事上のリーダーに。
とにかくみんなと仲良くすることよりも、仕事のクオリティーを求めたい職人気質の人には、良い備品や二つ、三つと仕事の業務を少しずつ増やす。
どうしても、1つの事の仕事しかできない、知的障がい者レベルが高い人には、一つの業務にとにかくこだわってもらう事と、支援センター員の人を必ず、サポートでつけるなど、チーム一人ひとりの特性に合わせた役割を任せる事を行いました。
一方で、お昼御飯は皆で食べて、コミュニケーションを必ずとるという事はルールとしました。
お仕事を役割分担すると、個々で黙って仕事をする機会が増えたので、コミュニケーションの場は意図的に作るようにしたんです。
障がい者チームのリーダーを決める。そしてフェードアウトの準備
3ヶ月間、私も結構付きっきりで、このチームと一緒に仕事をしていましたが、さすがに私も他の業務もあるので、そろそろフェードアウトしていかなければなりませんでした。
ですが、障がい者の皆だけで、お仕事をしてもらう時に、何かあった場合のリスク対処方法を考えておく必要がありました。
ここで、私が考えたのは、後天的に障がい者となった、身体障がい者となった方のリーダー採用です。
要は、チームのマネジメント職の採用ですね。
幸いにも、社内にお知り合いの方で、以前飲食店でバリバリ店長をやっていましたが、事故で左半身が不随になった方が、チームを見てくれることになり、その方にチームマネジャーを任せて、私はチームを離れることになりました。
チームの核となっていたお掃除リーダーが退職
マネジャーを採用し、チームを任せるようになって2か月くらいした後、一つ大きな問題が発生しました。
一人、40歳で知的障がいでチーム立上げから入社して頑張ってくれていたお掃除のリーダーが、新しく入ったマネジャーの悪口ばかり言って、みんなに吹聴し回っているという報告が入りました。
この方は、ずっと私の事を尊敬してくれていて、とにかく何があってもついていきますと、いつも私に良い所を見せようとお掃除をやりつつ、みんなのサポートも積極的にやってくれていた人だったのですが、私がチームを離れた後から、精力的にお仕事をしなくなってしまいました。
それだけではなく、みんなに悪口を言っていたり、お仕事をさぼってしまったりと、むしろマイナス評判の方が目立ってきてしまっていました。
「とにかく、戻ってきてください! みんな新しいリーダーを誰も認めていない! もしけさんじゃないとダメなんです!」
夜中に泣きながら電話をしてくる事もありました。
他の皆に聞いてみると、その人以外は新しいリーダーを認めていて、むしろ不満は全然ない状態でして、噂を流していたその人が逆に責められるようになってしまい、居心地が悪くなってしまったのか、その方は退職する事になりました。
後から来た人を中々認められない。知的障がいの特徴
とある時、障がい者採用支援をしている会社のアドバイザーの方とお話しする機会があり、この事を共有しましたら、以下のようなお話を頂きました。
「知的障がい者の方の特徴に、新参者を認めなかったり、特定の人に依存してしまうという人がいます。
自分がそのチームで一番頑張ってて上だと思っている時に他の人が入ってきた。
さらに元々、親のように思っていた人がいなくなってしまったので、不安定になってしまったのだと思います。
障がい者のチームを創ると決めた当初から、人事の人が最終的に抜ける予定であったならば、そこまで深く一緒に仕事をしたり、コミュニケーションをとったりせず、あくまで黒子としていた方がよかったかもしれないですね。」
このアドバイスで、自分の失敗に気づきました。
申し訳ないことをした・・・。
なので、もし障がい者採用でチームを創るならば、自分は【立上げメンバーの一員】としてではなく、ただのサポーターの役割に徹した方がいいです。
ご参考までに私の失敗談の紹介でございます。
まとめ 障がい者採用は、サポートしてくれる人達をどう巻き込んでいくかがカギ
このチームを立ち上げで安定した状態まで作り上げられるまで、かかった期間は約半年でした。
約7年ほど前にやった事ですが、このチームは、今も、お掃除部隊として会社に貢献していて、今ではチームも分かれて、結構な大所帯になっているとか(私が退職した後聞いた情報による)。
非常にやり甲斐が、ありつつも、中々大変なお仕事でした。
健常者と知的障がい者という区分は、ありますが、一緒に仕事をしてみるとわかるのですが、部分部分で起こるトラブル時の感情や不満などは、ホントに私と何も変わりがありません。
自分が頑張ってるのに認めてくれない。
サボっているのは不公平だ。
仕事ができるのに何で同じ給与なんだ。
好きな人ができて仕事に集中できない。
文中でも書きましたが、ホント、健常者と何も変わりありませんよね。
ただ、それでもやはり仕事をする上では、健常者よりハンデキャップを感じてしまう部分がどうしても出てきてしまいます。
そこを、どう仕組みと周りの支援機関を活用して構築していくかが大事です。
半年以上の長丁場にはなりますので、結構大変です。
一人で抱え込まずに、周りと協力をしながら、中期的に気持ちにゆとりを持って、少しずつ作っていってください。
以上です!最後までお付き合いくださりありがとうございました!